クローン病が治った食事その2

 文部科学省の「日本食品標準成分表」をみて計算したところ、タンパク質をとるために最もコストパフォーマンスが良い食品は、卵である。

 わたしの家計が破綻したことは前に述べたとおりで、以来、どうやって難病を治すか、どころではなく、どうやって生きていくかに全知全能をふりしぼる、愉快な日々が始まった。
 10円単位、いや1円単位で節約しなければならぬ。
 主食はここまでに書いたとおりだ。基本は5キロ2千円のパスタ。あとはスーパーで半額になっている食パンを買いだめして冷凍したものである。
 主食はこれでよし。

 で、副食だ。
 今回はタンパク質に焦点をしぼって書こう。

 節約だけを考えれば、1位が卵、2位が僅差で豆腐である。どっちを買っても大差ないが、10円単位、いや1円単位で節約しなければならぬ。てわけで卵をチョイス。
 しばらく、卵をゆで卵にして食べていた。
 だが、やめた。便がクサくなるからである。だけではない。オスのヒヨコを惨殺していることを知ったからだ。
 養鶏業にとっては卵を産むメスだけが必要なので、ヒヨコのうち半数いるオスはどうなるかというと、生きたままシュレッダーにかけられる。これはまだいいほうで、そんなことに設備投資してられっかという多くの業者は袋詰めにして窒息死させるか、その手間も惜しい業者はゴミ箱にどんどん投げこんで上のヒヨコの重みで下のヒヨコをじわじわ潰し殺している。
 ちょっと待てえぇぇぇこんな虐殺に加担したくないぞおぉぉぉ。

 てことで豆腐に変えた。



 うん♪ 便がクサくならない♪
 そして罪悪感から逃れることができた。
 さらにクローン病もよくなってくるではないか。あ、当然ですね。甲田先生が推奨した食事であった。

 しばらくして、食卓に変化をつけるために高野豆腐もとりいれた。
 昼は食パンに豆腐。
 夕飯はパスタに高野豆腐。

 パンに豆腐ってなんだそりゃってかんじであるが、だいじょうぶ。慣れればまったく違和感はない。
 パスタに高野豆腐って、そんなんアリか。ぜんぜんアリだ。パスタをゆで始めるときに高野豆腐をブチこみ、ゆでたお湯にそのままカレーを溶かせば、ドジャアァァァン! 高野豆腐のスープカレーパスタのできあがりィ! カレーがしみた高野豆腐はウマいぞ。

 で、これで安定。とおもったが、うーん、なんだこれは。ときどき、お昼を食べたあとにえらく具合が悪くなる。

 どうも、たまに豆腐にハズレがあるようだ。
 これはクローン病にかぎった話であり、みなさんは気にしなくてよいレベルだが、鮮度だった。まだ消費期限に余裕があっても、スーパーに置かれていた位置などにより、松井にとってはすでに消費期限切れのものが混じっているのだ。
 この問題が比較的おきにくい、容器にぴっちり詰まったタイプの絹豆腐(充填豆腐。パック詰めしてから加熱製造するので菌が入っていない)を選ぶようにしていたが、それでもだめである。そして表示の消費期限では判別がつかず、外見でもわからない。うーん。どうしよう。

 てことでコストパフォーマンスがかなり悪くなるが、豆腐をやめ豆乳に変えた。
 すると、昼食後に体調が悪くなることがなくなった。

 ただし、この豆乳にも条件がある。開封前は常温で保存できるタイプのものに限る。
 いちどうっかり「要冷蔵10度以下」の表示を見逃して、「豆腐もできます豆乳」なるものを買ってしまったのだが、味は良かったが久々に下痢をした。スーパーに並んでいるあいだに、クローン病の人にとっては悪くなってしまっているのだ。

 というわけで、昼は食パンに豆乳。
 夕食は高野豆腐のスープカレーパスタで、いまは安定のかたちである。
 ますます治ってきた♪


 なお、みなさんは高額な卵を買えばいいですよ。とくに子供がいるご家庭で、卵料理がないのは子供の人格形成上問題がありそうな気がする。
 高額な卵といっても、色をつけただけのインチキ高級卵ではなく、飼育方法をウェブサイトで公開している業者の卵。スーパーの4倍5倍くらいの値段のやつである。それでもオスのヒヨコをどうしているかはわからないが。

 ほんとうは、治療的には少しだけ動物性タンパク質も欲しいところなのだが、いまは高級な卵なんて買えないし、肉はコストパフォーマンスが最も悪いし。
 だがこの課題は後日解決できた。回をあらためて書こう。



◆編集後記
 甲田先生は、肉を食べることは「殺生(せっしょう)」をしていることだと意識してほしいと説いていた。いっさい食べないまでも、いままでの半分にしてはどうかと。
 それで健康になり長寿になるのは、動物性タンパク質の害が減るからなのだが、殺生の報いが減ることが大きいのであろう。


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