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12月, 2022の投稿を表示しています

欲という病

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  「足るを知る」と言ったのは老子(ろうし)である。  プレステが欲しい。switch(スイッチ)が欲しい。そうだろうか。  たしかに、欲しかった。欲しくて、欲しくて、たまらんかった。だけど、ないならないで、ないのが当たりまえで、やってこれてしまった。  そりゃゲーム機だから、なくても生きていけるのは当たりまえだ。  だが、わたしが買えなかったのは、ゲーム機だけでない。この4年間、服も買ってない。そろそろ下着が何点かダメになりそうなので、もうちょっとしたら買わないといけないが、まだいける。  食料品は、買わないと餓死するので買うが、生命が維持できればいい。高いものはいらない。高いものとは、高級品ということではなく、たとえば菓子パン1個を買おうとおもえば食パンが1袋買えるので、菓子パンは「高いもの」である。  漢方薬を1回ぶん買うお金があれば、「ほぼ漢方薬」であるカレー粉(ルウじゃないよ。ウコンとスパイスをブレンドしてある粉)が数年ぶん手に入るので、漢方薬は高級品である。  これらすべて、なくても、こと足りている。  てか、足りていると知ってから、クローン病が治った。  すなわち、「足るを知る」。なるほどねえ。  さらに孟子(もうし)は、 「心を養うは寡欲(かよく)より善(よ)きはなし」  と言っている。  こっちは「足るを知る」よりももっと積極的なニュアンスがある。心を成長させようとおもうなら、なによりも役に立つのが欲を抑えることだと。なので老子の、なんとなくあきらめの境地っぽいところから、もっと踏みこんで、「欲しい」という心を自らすすんで捨てていこう! というスローガン的な言葉である。  うん。そう。そうなのだ。それは、たしかに、そうなのだ。  何もいらなかったなあ。何にもなくても生きていけるんだなあ。それで何も困ることはないんだなあ。あのまま「欲しい、欲しい」の心が燃えあがっていたら、たぶんまだクローン病は治っていない。足るを知る。そのとおり。知るべきである。  だけれども、なあ。  そうはいっても、おれ、なあ。  プレステもswitch(スイッチ)もやりたくないわけじゃないんだよぉぉぉぉぉ(w)  じゃなきゃこんな記事書いてねぇぇぇ。  前回もちょろっと触れたが、文化への関心がまったくなくなってしまうと、よくない。仕事に支障がでる。好奇心を失うと脳も衰える。ニ

鏡の中で暮らしてたらゲーム卒業してた

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  プレイステーション3が欲しかった。  ゲーム機である。  発売は2006年。ときあたかも爆発的ヒットとなった任天堂のゲーム機「Wii(ウィー)」とほぼ同時に現れ、現れたはいいけど、Wiiの影に隠れるかたちとなってしまい、あんまし話題になんなかった悲運の機種だ。  買ってあげたい。  って、なんで上から目線なんだって話だが、このプレイステーションのシリーズは、初代機の登場もすごかったがそれに続く「プレイステーション2」への進化もすばらしく、2世代つづけてヒットした。ところが「3」は、あんまし、そんなに、んーこれどこ変わったのう? 的な、マニア以外にはいまひとつ訴求力に欠ける商品だった。「プレステ2あればいいじゃん」的な。  買ってあげたい。  おれ、マニアなんで。  でもプレステ2あるし、買ったばかりのWiiもあるし。うん。とうぶん、いらんわ。となった。  いっぽうそのころ、クローン病はいちばん苦しい「底」に向かい始めていた。ぱぱっと治しちゃおうと思っていた計画は大幅に外れ、さんざん書いたとおり毎日38度の熱、30回から40回の下痢、おしりに5つの穴があいてウミが流れ激痛で座ることもできず、ほぼ寝たきりになった。  本を読んでも頭に入ってこないので、ぼーっとテレビを見ているしかない。かすかに元気なとき、とっくに飽きたWiiをいじるくらいしか、まったくもって楽しみがなかった。  プレイステーション3を買いたい。いまこそ。  しかし、クローン病も底なら、貯金も底をついていた。  さんざん書いたとおり漢方薬どころか日々の食費に困っていた。どこをどう削れば生活できるだろう。  娯楽費なんて真っ先に全切りしている。  ゲーム機はおろか、マンガ本も買えない。レンタルすらできない。ああ、「ジョジョ」の続きはどうなっているのだろう。「キングダム」はどのへんまで話が進んだのか。読みてぇ。 「よし。漢方薬が買えるようになったら、マンガをレンタルしよう。そしてプレイステーション3を買ってやる……ッ」  病気は治らなかった。ますますひどくなっていく。  金欠もおさまらない。貯金はゼロどころかマイナスに。  読者さんがじりじり減る。  もとから友達がいないのに引きこもっているから完全に「ぼっち」。  遠ざかっていく。何もかも。  わたしはクローン病を治すなんて言っているけど、もしかしてこの

セロトニンと殿様のカゴ

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  あなたは今、しあわせであろうか?  なんていうと宗教の勧誘みたいだが、いや、そうじゃなくて、実感の話だよ。  しあわせ、な、はずなのだ。  あなたは今、むかしの殿様以上の暮らしをしているからである。  江戸時代まで、最高の乗り物といえば、「かご」だった。殿様くらいしか乗ることができない。しかし、長い道中、狭い箱の中は手足をじゅうぶんに伸ばすこともできず、夏は蒸し風呂、冬はスキマ風、長時間ゆらゆら揺られ、これは何の罰ゲームですかという乗り物だった。  ところがあなたは自動車に乗っている。マイカーは持ってないよという人も、タクシーを呼べばサッと高級車が運転手つきでやってくる。数千円で、殿様もびっくりのご身分が味わえる。  食事にしても、きょうのあなたの「いつものごはん」は、王侯貴族のごはんである。あーまたきょうもこれか、というその食事を、かつての庶民は一生あこがれ、いちども口にできずに死んでいた。  他にもあなたは、雨つゆしのげる家があり、水道から世界一きれいな水がどばどば出て、銀行口座を持っている。  ここまでの条件がそろっているのは、地球を100人の村とすると1人だけである。  で、しあわせでない。  言われてみれば、なるほどたしかにしあわせなんだな、と頭ではわかる。だが実感がない。しあわせの手ごたえ。が、ない。  ないはずだ。人間の欲望にはキリがないのだから。  車に乗れるのなんて当たりまえだろとなってしまうと、もうそれは幸せの要素ではない。もっといい車に乗っている人をみるとそわそわしてくる。幸せどころか、苦しみのタネだ。  現代はスマホなどという珍妙なアイテムもある。これも殿様が見たら腰を抜かす道具だ。かごの中でこれがあったらさぞ退屈がまぎれたのにと地団駄踏むだろう。殿様どころか、わたしの実家の老父母が見てもたまげるアイテムである。パソコンの仕事をしている私でさえiPhoneが登場したときは驚いたものだ。  で、いま、そのスマホを指でチョンチョンしながら私たちは「退屈だ」と言っている。  この世で最も不幸な人は感謝の心のない人である。  しあわせという感情を生物学的にいうとセロトニンの分泌といえる。セロトニンは副交感神経が優位のときに出て、脳にしあわせ感をもたらす。ストレス状態では交感神経が興奮しているのでセロトニンが出ない。しあわせを感じない。セロトニンが

寿命が延びる健康法、存在しない説

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  さて私は難病が治ったところで、これから何をしたいかというと、健康法ではない。  え? ちゃうのん?  うん。  まあ妥当に考えればだね、このまま健康法の先生になるのが、ビジネスとしては成功するとおもうよ。「難病が治った私が、その方法を伝授します!」と。でも。  それはメルマガ創刊のときにしたかったこと。20代でしたかったことなのよね。  なにしろ1年で治そうとしてたからね。「わたし、クローン病治します!」と1年計画を発表し、公開実践したのがメルマガの始まりだった。その1年後から先生をやろうと思ってたのだ。  それが、クローン病、思いのほか手強く、てか、あのころナメすぎてただけなんだが、つまり人生というものをナメていた、若気の至り、バカげの至りだったのだ。  クローン病が手強かったのではなく、わたしが手強かったのだ。クローン病を治すのではなく、わたしのバカを治さねばならなかったのだ。  それに20年かかったー。わら  さて、なのですでに予定が大幅に遅れているのである。  健康法にばかり時間をかけてもいられない。  健康法をしているあいだにも、命はすり減っているのだ。  たとえば1分実行すれば2分寿命が延びる体操があるとする。これは果たして2分の命を得たことになるのか。 「新品のスマホが実質0円!」  なんて広告がある。実際にはお金がかかる。2万円で端末を購入すると翌々月にポイントが2万円ぶんつきます、というのがパターンだ。しかも期間限定ポイントだったり用途限定ポイントだったりする。先に2万円払ったものが、価値を減らされて一部が戻ってきたにすぎない。  健康法を1分間実行したということは、寿命を1分使ったのだ。それで2分の寿命を得たとしても、「実質1分」である。  だがこれだったら、それでもおトクだ。1分寿命を延ばし続けていれば、人は死なないことになる。  だが人は必ず死ぬ。  ということは?  寿命が延びる健康法なんて存在しない。  1分実行して1分以上の寿命を得ることは不可能だ。じわじわ減る。  1分実行してちょうど1分寿命が延びる体操なら、収支はプラスマイナスゼロ。  30秒延びる体操なら、マイナスである。  健康法のメルマガでこんなこと書いていいのかよとわれながら思うが、事実なのだからしかたがない。  さあ、困った。  健康法、どうする。  ながらでする。