おいしい漢方薬を摂取せよ!〈前編〉
シナモンは漢語でいうと桂皮(ケイヒ)、クローブは丁子(チョウジ)、ターメリックは鬱金(ウコン)という。
これみな漢方薬である。
そして食品棚をみると、シナモン、ターメリックなどのスパイス類が並んでいる。
ここに漢方薬があったじゃあああないかッ!
これを料理に使えば。
お金がなくても漢方薬が飲めるじゃーないか。
もちろん、ちゃんとした漢方煎じ薬(かんぽうせんじぐすり)ではないので効果のほどはわからんが、少なくともゼロではあるまい。100点満点中、何点いけるか知らんが、しっかりと成分を抽出するようなやり方をすれば……。
というわけで、じろークッキングの時間です。
まず、朝はコーヒーから始めます。これも漢方薬です。黒くて苦い液体。はい漢方薬にまちがいありません。
え? 朝は水じゃないの? そうです。寝起きにたっぷり水を飲んで就寝中に失った水分を補給し、体の乾きが癒えてきたのを感じたら、コーヒーを飲んでもOKのサインです。では淹れていきましょう。
わたしの淹れ方は手でペーパードリップです。コーヒー好きでないかたにはイミフな話ですが、メリタの500円で買えるプラスチック製ドリッパーを長年愛用しています。ペーパーフィルターもメリタの純正品を使っていましたが、もうそんな贅沢はできません。はい100均のものを使用します。道具の不足は技術で補いましょう。
しっかり、豆の成分を抽出することを意識してドリップします。蒸らし時間を長めにとり、そのあともお湯の水位があまり上がらないようにちょっとずつ、なおかつフチにせり上がってくる豆を沈めてやるように狙って注ぎます。漢方薬としての効能を完全に得るにはグツグツ煮出せばいいのでしょうが、たぶんおいしくないです。やめましょう。
ふつう雑味が出ないようコーヒーが落ち切るまえにドリッパーを外してしまうのですが、雑味こそ漢方薬の成分です。最後の一滴まで落とし切ります。そして雑味は旨味なのです。これを捨てるなんてもったいないおばけが出ること確定です。はい、いい香りに入りました。では、いただきます。合掌。ズズ。
はぁー……。
おいしい……。
いままでの、苦虫を噛みつぶしたほうがマシなくらい苦い漢方薬とは、雲泥の差です。
なんとおいしい漢方薬でありましょう! 笑。
ごちそうさまでした。合掌。
今のわたしの最高の贅沢品です。ありがとうございます。贅沢する資格のないわたしですが、漢方治療の一環となれば、またおのずから話は別というものです。ということにしよう。
ではいよいよ、じろークッキング、ここからが本番です。
スパイスの棚を見てみましょう。黒コショウ、ジンジャーパウダー、ターメリック、クミン、シナモン、ナツメグなどが並んでいます。もらいものです。この食糧難、もらえるものはなんでももらう、食べられるものはなんでも食べると決めたので、もらったのですが、もらったからには、もちろん使うのですが、使おうとしたら、これって漢方薬じゃね? と気がついただけです。
まず使いやすいのは黒コショウとジンジャー(生姜)パウダーですね。何にでも合います。料理はとりあえずこの2つを使っておけば下味はまちがいない。ほぼ寝たきりのときにさんざん見た3分クッキングときょうの料理で学びました。ほんとはコショウでなくニンニクだが。
これを、主食であるパスタにからめて食べてみましょう。成分を抽出するには、茹であがりアツアツのうちに、お湯をあまり切らずに皿にとって、いえ、どんぶりにとってガシャガシャッ! とからめます。で塩。しょうゆ。オリーブオイル。
ふつうパスタをいったん鍋に戻して完成させたものを食器に盛りますが、そこは男の料理、こうやって洗い物を極力減らします。というより、鍋にスパイスや油を残したくないのです。もったいないおばけが出ます。
ではいただきます。合掌。ズズ。
うん♪ ぜんぜんおいしい♪
はいこれだけでいけますね。生きていけます。ありがとうございます。
この黒コショウと生姜パウダーをベースに、日によってターメリックとクミンを加えてカレー味にしたり、シナモンを加えて甘い香りをつけたりして変化を出すとしましょう。ナツメグは、ほんらい肉料理の臭い消しなのでこのパスタに使う意味はないですが、なくなるまでは使わないといけないので使います。味の変化は、よくわかりません。味は関係ありません。これらは漢方薬なのです!
そして。
なんと摂取するのが楽しい漢方薬でありましょう! 笑。
しばらく、このシンプルなパスタを食べていたが、ここにカレールウを少量加え、さらなるおいしさアップを実現した。
そして、こればっかり食べる生活をして、1年半。
もらったスパイス、見事、すべて使い切りましたァーッ! パチパチ。
そして。
イイっ!
すこぶる体調がいいッ。
つづく
◆編集後記
最近になってメリタ純正のペーパーフィルターも、週に1枚だけ使うことにしました。がんばった日の、たまのごほうび。
久しぶりに使うと、100均のものよりも紙の厚みがまったくちがうのが、持った瞬間わかるし、フチを折っているときにもなおさら感じる。味も歴然とちがう。なんとまあ贅沢なことよ。
あー今までこれを当たりまえに思っていたとは。愚かなことよ。
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