漢方薬をあきらめて見つけた

 家の中は、つねに険悪な空気であった。
 お金のことで、なんでもないようなことで諍(いさか)いになった。なんでもないようなことがー、ふしあわせだったと、おもーうー、てことで、会話がなくなった。

 食事も黙って食べる。食卓にはテレビの音と食器の音がするだけである。
 あるとき、いつもどおり口論になったのを機に、「もう自分の食事は自分でつくって別々に食べましょう。家計も分けましょう」「そうしましょう」、となった。
 はい、じっさいはこんな落ち着いた会話ではありません。ピー。

 さて。
 どうやって生きていくかな。
 手始めに生活費を計算してみた。
 うん。ぜんぜん漢方薬どころじゃないね。
 はい治療は一切やめ。

 えーっとそうすれば、ん、食費をギリギリまで削れば、生きてはいける、かもしれん。




 食品以外の買い物は、紙パンツと、だめになった下着を買い換えるていどであった。
 食べるものしか買えなかった。
 それも、いままでずっとこだわってきた減農薬や無農薬のものは、とてもじゃないが買えない。そこまで良くはないけど悪くはないもの、すら買えない。
 スーパーの安売り品しか買えない。絶対に口にするまいと思っていた、マーガリン使用の食パン。豆乳を半分にうすめて凝固剤でむりやり固めた「ほぼ水」の豆腐。

 安物でなくても購入してよいのは、スーパーで買ってもアマゾンで買っても値段がいっしょのものだ。または費用対効果をかんがえて最安商品でなくてもよいもの。オリーブオイルがこれに該当した。サラダ油なら半額にできるが少量しか使わないものなので、ここでそんな最悪の食品を選ぶべきではない。あと塩としょうゆも、使うのは少しなので最安値でなくてよい。

 もっぱら消費する主食と副食が問題である。
 主食は、玄米、といきたいところだがいまのわたしの腸には受けつけない。粉にして煮て玄米クリームにすればいいが、あんな手のこんだ料理をつくる体力はない。なにがいいかと探すと5キロで2千円以下のスパゲティがお買い得なのでこれでいくことに。それと前述の食パン。

 副食は、野菜、はクローン病のおなかではどうせ消化できない。タンパク質だけでよかろう。
 野菜の栄養は必須だが、いままでは甲田先生の青汁があるからよかったが生産中止になったし、あっても買えんし、うーん、とりあえずこれもアマゾンで買える徳用の粉末青汁でしのぐ。もっと優れたものがないか、あとで探すとしよう。

 あとは一切買わんでよし。当然おやつのたぐいは全カット。調味料も塩としょうゆだけでよし。生命を保つために必要なものだけでよし。
 こんなところかね。


 あとコーヒー、は、飲まなくていいものだが、うむぅ。さすがにこれまで削ると、生きていく希望が消える。死なずにすむなら、費用対効果は高いとみるべきだろう。よし。500グラム千円以下の豆に限定して買うのを許可する。

 ん?

 まてよ?
 まてまて。ちょっとまて!
 これ……

 漢方薬ですよね。


 目からウロコが落ちた。
 わたしがこれまで飲んでいた高額の漢方薬というのは、いわゆる「生薬(しょうやく)」というやつである。
 たとえば、わたしが処方してもらっていた排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)であれば、

  ○キジツ……ダイダイの未熟果実
  ○タイソウ……ナツメの実
  ○キキョウ……キキョウの根
  ○シャクヤク……芍薬の根
  ○ショウキョウ……ショウガの根茎
  ○カンゾウ……甘草の根

 といった、ようするに植物である。
 これらをいっしょくたに鍋に入れてたっぷりの水で40分、もとの水の半量になるまで煮出して、できあがった茶色く濁った液体を飲むのである。はい舌がよじれるほどニガいー。
 漢方煎じ薬(かんぽうせんじぐすり)とこれをいう。

 コーヒーだって漢方煎じ薬じゃあないかッ! 

 インスタントコーヒーは別物ですよ。豆から淹れるやつね。いわゆるレギュラーコーヒーであるが、これはコーヒー豆という植物を煎ったものであり、それをドリップするのはお湯で成分を抽出するということであり、やっていることはまったくもって漢方煎じ薬(かんぽうせんじぐすり)ではないか。

 まてよ。まてまて。するってえと、だ。
 食品の棚をみた。
 同居人から「これはもう使わないので、よかったらどうぞ」と財産分与(笑)されたスパイス類がいろいろある。
 ターメリック、ジンジャー、クミン、シナモン、ナツメグ、……。

 ここに漢方薬があったじゃあああないかッ!


 つづく。



◆編集後記

 ドラゴンクエストふうにいうと、「じろーは足もとをしらべた! なんと漢方薬をみつけた!」


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