新しいクローン病にならないために ~再発について

 あと2回でこの「クローン病中ひざくりげFINAL」は連載終了です。長いこと読んでくださって、ありがとうございました。
 わたしがクローン病について書くのも、これで完結です。
 ……長かった。笑
「ちゃちゃっと治して次のステージいくぜ」と始めたこのメルマガ。クローン病編は1年で終える予定だったんだが、4半世紀ちかく続いてしまったぞ。とにかく完結できて、よかったよかった。
 では最後に、みなさん興味がおありであろう、残された問題について書いておこう。

 ――治ったなら再発はしないのか?




 ヤですねー。人生の4分の1くらいの時間をかけて、よーやく治ったってーのに、それマジかんべん。
 答えからいうと、「再発」は、ない。
 だが新しいクローン病になることは、ある。

 どういうことか。
 ひさびさに松本仁幸先生の論文を引用するぞ。(難解だと感じたら飛ばしてください)

          ◇

 まずアレルギーが完治するということは、過去に作られたアレルゲンである個々の化学物質とひとつずつ免疫寛容を起こしていくことです。つまりひとつひとつのアレルゲンと共存することです。次に、膠原病が完治するということは、膠原病で用いられるIgG抗体をクラススイッチしてIgE抗体に変え、症状をアレルギーにして、最後は過去に作られたアレルゲンである個々の化学物質とひとつひとつ免疫寛容を起こしていくことです。(中略)

 化学物質を人類が作り出し始めて250年経ちます。その間、人間は7500万種類の化学物質を作りました。この瞬間でも全世界の化学工場で新しい化学物質が作られています。なんと1日に15000種類以上といわれています。膠原病やアレルギーは過去に作られた抗原、あるいはアレルゲンに対して戦って生じているものです。決して未来に作られる可能性がある化学物質を敵に回して戦っているのではありません。既に作られた化学物質を異物として認識した免疫は、免疫を抑えない限りは必ず自然後天的免疫寛容を起こすのですが、未来に作られる新たなる化学物質を異物と認識するかどうかは、未来にしか分からないのです。ただ言えることは、過去の化学物質に対して膠原病やアレルギーを起こした人が、未来の化学物質に対して膠原病やアレルギーを起こさないということはまず考えられません。化学文明社会が化学物質を作り続ける限り、膠原病やアレルギーは起こり続けるのです。なぜならば既に過去に、あるいは現在においてアレルギーや膠原病を起こしている人は、生まれつき持っている異物を認識する遺伝子であるMHC ll 遺伝子の多様性が、アレルギーの少ない人よりもはるかに優れているからです。(中略)

 自然後天的免疫寛容というのは、ひとつひとつのアレルゲンに対して免疫寛容を起こすことであるということです。生まれ持ったアレルギーを起こしやすいという一般的な性質がなくなることではないのです。これは当たり前のことでありますが、一般大衆は、過去や現在に起こしているアレルギーが完治してしまうと、2度とアレルギーは起こらないと勘違いしている人が多いのです。言い換えると、巷で「アレルギー体質を変えることができる」とか「アレルギー体質を変える食品がある」とか「アレルギー体質を治す治療法」というのは全て嘘なのです。なぜならば、「体質」というのは生まれ持った遺伝子の設計図でありますから、それを変えることは絶対に不可能なことだからです。(中略)

 このような誤解があるので、当院で10年前にステロイド離脱をして、自然後天的免疫寛容を起こしてアレルギーが完治したと思い込んだ人が、10年後に再び別のアレルゲンに対してアレルギーを起こしたにもかかわらず、「治ったと思っていたのに、アレルギーがなぜまた起こるのか」とクレームをつける人がたくさんいるのです。どうしてこのような誤解が起きるかというと、自分勝手にアレルギー体質がなくなったと思い込んでいるからです。体質、つまり遺伝子は永遠に変わらないことに気づいていないのです。

 ここでもう一度まとめましょう。過去に作られた化学物質のひとつひとつのアレルゲンに対して免疫寛容を起こして共存することができるので、「そのアレルゲンに対して免疫寛容を起こした後は、そのアレルゲンだけとの戦いで生ずるアレルギー症状は完治する。しかし新たに作られたアレルゲンに対して再びアレルギー症状がでるかどうかは分からない。」というべきなのです。少し長ったらしくなりましたが、これが膠原病やアレルギーの完治の意味であります。

(旧・松本医院ホームページより ※現在は閲覧不可)

          ◇

 ようするに、いちどカゼをひいて治ってもまたカゼをひくことはあるかもよってこと。
 クローン病が治った松井は、クローン病になりえるふつうの人と同じ体になったんだよ、ということである。
 二度と病気にならない体になったのではない(なるわけない)。

 つまりみなさんと同じになったのだ。

 ただ、ふつうの人と違う点がひとつある。過去に難病になった実績があるという点。
 そう。わたしは難病になる素質が、人よりも優れているのだ。難病になる才能があるのさ(ほかの才能を希望)。

 難病とは、「なにこの未知の物質あぶなくね?」と免疫が駆除または排除または共存しようと懸命になっている過程のことである。
 平均的な性能の免疫では難病にならないのは、この「なにこれ」が起きないからであり、そのふつう発見できない化学物質をわたしの免疫は「なにこれ」と捉えたことがあるわけだから、これからも平均的な人よりは「なにこれ」となる可能性は格段に高いのだ。

 したがって、治したクローン病は再発しないが、これから新しいクローン病になることはありえるのである。

 ……わかりました?
 とにかく、化学物質なんとかしなきゃとがんばっている状態を難病というんです。で、新しい化学物質がきょうも1万5000種類つくられてるんです。いつまたその新しい化学物質に対する新しいクローン病になるともわからないわけです。クローン病ではなく他の難病として反応するかもです。

 じゃー化学物質やめましょうってことです。
 なるべく。
 いやなるべくじゃなくゼロにしようよ。といきたいとこですが、それ空気すえない。
 なのでできることをする。
 なるべく食品添加物を避ける。まして薬という化学物質のカタマリなんか極力飲まないように。あと少食にすればそれだけ食事に含まれる化学物質を減らせてなおよし。
 そして健全な体をつくるために健全な心をつくろう。
「遺伝子は変えられない」というが、心のありようしだいで、もしかしたら変えられるかもしれない。変えることはできなくても、発現しないようにはできるかもしれない。わたしはそれを少し期待している。

 無病息災、不老不死。人類の夢だ。
 だが無病息災は、理想ではあるけれど、幻想にちかい理想なのだ。まして不老不死は完全に幻想。
 あと30年か、40年か、わからないけれど、ちょっとだけ健康な時間をもらえた。
 無駄にするまい。


◆編集後記
 メルマガ初期からの読者さんとはほんとうに長い付き合いになりましたね。きょうまで見ていてくれて、ありがとう。みなさんがいてくれたから、がんばれた。うそつきにならずにすみました。合掌。



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