1年じゅう鼻水がでるのは病気であり病気でない

 さて、これでひとまず連載はおしまい。松井がクローン病について書くことは二度とないだろう。
 ほぼ完治したし、伝えるべきことは書き尽くしたので。その内容はいつでも確認できるよう書籍にまとめたので買っておいてほしい。
 きょうは最後の最後というか、オマケ編。
 わたしの難病・クローン病はほぼ完治した。いま残っている主な症状は……
「鼻水」だ。



 ズルズル。んー、まだ腸のキズが全部ふさがったのではないからなあ。それで「ほぼ完治」という言い方をしているわけだが。
「腸のキズ」と「鼻水」。どう関係あるの?
 みなさんのなかに「なぜか1年じゅう鼻水が出るんだけど、なにか深刻な病気では?」と悩んでいる方もおられるだろうから説明しておこう。
 おやおや? 鼻と腸が、なんかしゃべっていますよ。

 鼻「ほんと良かったわなぁ。いちにち30回もトイレに駆けこんでたひとが、いまは2回、多くて3回だもんなぁ。腸さんもがんばったわなぁ」
 腸「ああ。もう一生ぶんのトイレは行ったからね。あとはのんびり余生、といきたいとこだがそうもいかんようだ。また本体のやつ、なんか食べてるぞ」
 鼻「そりゃ食べるわなぁ。生きているもの人間だもの」
 腸「もうすぐ胃を通過してくるころ、あ、きたきた! 食事キター。あ、あちっ! アチチ、アチッ」
 鼻「どうしたの? 燃えてるんだろっかぁー」
 腸「アチチアチ♪ それは太陽がー♪ させたこーとーってばか。子供んとき分かんなかったけどあの歌詞は18禁だぞ。いやそんなことじゃない。しみるんだよ、このキズが」
 鼻「そうだったなぁ」
 腸「治ったっつっても完全な健康体になったわけではないんでね」
 鼻「完全に健康な人間なんてこの世にいないわなぁ」
 腸「それな。とにかく、ここのよォ、このバックリあいてる傷口がしみるんだよ忘れたのか。おまえにも関係のあることだろう」
 鼻「そうだったねぇ。そろそろ来るかなぁ」
 腸「ああそろそろだ。準備しときな」
 鼻「ねぇねぇなんでそこから鼻水のもとがこっち来るんだっけ」
 腸「きみそろそろ覚えようね。いいか? いまオレの粘膜の上を、消化された食事が通過しているだろう」
 鼻「早い話がウンチね」
 腸「言うな。とにかくそのウン、消化された食事が、いまちょうどこのキズのところまで到達したのだ」
 鼻「なんでキズなんてあるんだっけ」
 腸「クローン病は腸がえぐれる病気なのだ。一時期は粘膜のほとんどがキズだったんだが、これでもずいぶんふさがったんだぜ。だがホラここ、まだキズがふさがってないとこが残ってるだろう」
 鼻「あーそうそう、これがあるから本体さんは完治と言わずに、ほぼ完治、って言ってるんだったなぁ」
 腸「そういうことだ。もうクローン病の症状はなくても医学的にはまだこの状態はクローン病というのだ。それはどっちだっていいが、アチチ! アチ! この傷にウン、じゃなかった消化された食事がしみるんだよォ」
 鼻「本体さんは痛くもなんともなさそうだなぁ」
 腸「腸壁に痛みを感じる神経は存在しないからね。これは説明上わかりやすくオレが痛がってみせているのだ」
 鼻「おつとめごくろうさまです」
 腸「ホラいま、このキズに消化した食べものが入っていったろ。あー血管に入っちまった」
 鼻「あらら。いっしょにバイ菌が入るわなぁ。ウンチだから」
 腸「言うな。菌だけじゃなく菌が吐き出した毒素やら食品中の化学物質やらも血液に混入してしまった。いまごろ白血球たちがあわてて仕事にかかっているだろよ」
 鼻「詳しくはここまでのメルマガをお読みください。電子書籍になったらポチってください」
 腸「だからそろそろそっちにも白血球のミサイルが飛んでいくってわけだぜ。準備しときな」
 鼻「は、は、はーくしょん! あ、鼻水が出てきた。思いだした。血液中に異物があるってことは、外敵が侵入したってことだから、白血球たちが敵を追い出すミサイルを撃ってるんだぁ」
 腸「正確にはIgE抗体だぜ。詳しくはここまでのメルマガを」
 鼻「にゃーん鼻水が止まんにゃいー」
 腸「ひとの話はきかねえのな」
 鼻「はーくしょん! ズルズル。白血球たちー、ここじゃないよぉ、異物が入ってきてるのわあぁぁ」
 腸「白血球はどこから異物が来てるかまでは分からんからね。いちばん疑わしい鼻の粘膜から追い出そうとしているのだ」
 鼻「ちがうのにぃー。腸の粘膜なのにぃ」
 腸「白血球たちは悪くないぞ。腸にキズなんかあるヤツが悪いのだ」
 鼻「にゃーん本体さん早く完全に治ってー。にゃーん鼻水が止まんにゃ、あ、止まった」
 腸「いまキズのところをぶじに通過したところだ、消化した食べ物が」
 鼻「ウンチね」
 腸「言うな」

 というわけでわたしの鼻水の原因は腸のキズから入ってくる異物である。これに対して白血球が出動する、いわゆるアレルギー反応が起きているのだ。
 そして、まだこれが病気とまでいかない状態が、9割の現代人に起きている。
 わたしのようにカメラで確認できるほどバックリひらいたキズではないが、顕微鏡なら見えるであろう無数の細かいキズがついている。
 誤った食生活のせいで。
 甲田光雄先生によると――1日3食では食べ過ぎで、人体には2食が適している。なぜなら、腸の粘膜は消化のたびに荒れる。空腹のとき、腸はこれを修復して次の食事に備えるが、1日3食ではひっきりなしに食事が通過している。修復するひまがない。荒れるいっぽう。9割の人に、目にみえないキズが無数にある。ここからつねに異物が侵入し、あらゆる体調不良がおきている――という。
 1年じゅう鼻水が出る人は確実にこの腸のキズがあると考えてよい。

 わたしは知識がないころ「鼻の粘膜をレーザーで焼く治療」をうけた。花粉症が治るときいたからだ。
「花粉症になる人は鼻の粘膜が弱いのです。いちどそれを破壊すると、新しい強い粘膜に再生して花粉が侵入しなくなります」。
 まじか! とワラにもすがる思いでそのレーザー治療とやらをうけた。麻酔をして鼻の粘膜をすべて焼き、アチチアチ! とはならなかったが麻酔が切れたあと2日間、ここは地獄ですか? という痛みに耐え、鼻水と涙が止まらなかった。
 期待に胸をふくらませて迎えた翌シーズン、花粉症はまったく変わっていなかった。
 鼻の粘膜など問題ではない。腸である。テニスコートひとつぶんの広さがあるこの粘膜からつねにアレルゲンが入ってくるのだ。
「あっ、小窓あいてた」と戸締まりしたところで、玄関があいていたら防犯効果はゼロである。
 腸粘膜を戸締まりしよう。キズを修復するのだ。昼食と夕食のあいだを6時間、そのつぎの食事までは18時間あけよう。
 おやつは食事じゃないですよね? いや食事ですてば。わたし2食なのに体調わるいんです、1食なのに最悪なんですって人はそこまちがえてないか確認。

 あと、キズとは関係ないが甲田光雄先生は「砂糖は鼻水のもと」とも述べておられる。
 かつてのわたしは甘いものに目がなくて、甘いものさえあれば食事はいらない人だった。
 とくによく飲んでいたのが某メーカーのカフェオレ。あの舌がよじれるほど甘いやつ。「これが100円ちょっとで500ミリリットルなんて、買うしか!」だった。
 たしかにあれを飲むとスーッと鼻水がたれてきてティッシュの世話になったものだ。
 甲田先生はそのメカニズムまでは書かかれていないが(わたしが知らんだけかも)、おそらく砂糖で手足が急激に冷えるので毛細血管が収縮し、寒いとカンちがいした鼻の粘膜が冷えに対応してるんじゃないか。
 他にも砂糖は精神不安、皮膚病、胃腸病、肝臓病、動脈硬化、心筋梗塞、がんの原因とおっしゃっている。
 こういうのをやめてかからないと、どんな体にいいものを食べたり飲んだりしても焼け石に鼻水。

 というわけで異物の侵入経路をふさぐことが何よりもだいじだ。クラススイッチだとか免疫寛容だとかは一般のひとには関係がなく二の次三の次と知るべきである。
 あと、やめるにはどうすればいいですかとよくきかれるが、ノウハウや根性は一切役に立たない。甘いものに頼らなくても幸せでいられる心になる以外ない。



◆編集後記
 レーザーで焼いたあと、鼻毛だけ濃くなった。
(:D)| ̄|_



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